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転職経験がある人の転職理由

 先のロジスティック回帰分析では、転職回数は長期雇用に対してマイナスの効果を未持っていた。これはどのような解釈をすればよいのか。例えば、ADHDは多動的なので転職しやすいと解釈すれば良いのだろうか。
 アンケート調査では転職理由について聞いている。分析をしたのは、転職理由が自閉症スペクトラム障がい(AQ-J-10による計測)とADHD(ASRSによる計測)によって異なるかというものだ。両者とも「仕事がこなせなかった」という理由は共通して挙げられているが、自閉症スペクトラム障がいの場合のみ「職場の人間関係」が統計的に有意位な差が出ている。これは、自閉症スペクトラム障がいの特性を反映したものであろう。ただし、ADHDの方も1.5とそれほど低い値とは言えない。「精神的にしんどくなった」という回答も自閉症スペクトラム障がい、ADHDともに少なくないもの統計的に有意に多いまでは言えない。

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 このように自閉症スペクトラム障がいとADHDに分けて分析してみたが、ADHDの特性として多動があるために転職回数が多いというような結果はみられなかった。それよりも、仕事がこなせなかった、職場の人間関係、精神的にしんどくなったという消極的でネガティブな理由が多いようだ。
 結局の所、転職回数が多いと長期雇用に結びつかないのは、仕事をすることに精神的な負荷を感じたり、職場の人間関係に困ったり、仕事自体について行けなかったりすることで、離職をして、新しい職につくものの、また同じような境遇に置かれるという負のスパイラルに巻き込まれているという理解が正しいと考えられる。
 発達障がいは児童期のものであったり、精神保健の領分だと考えられがちであるが、仕事を続けて安定した生活し社会人として生きていくという側面から考えると就労問題の一つであることは疑いようのない事実である。

■ 参加者の年齢と性別
■ 就労継続期間
■ 雇用形態
■ 長期就労者のいる職業領域はどこか
■ 自閉症スペクトラム指数と作業の苦手さの関係性
■ 成人期のADHDの自己記入式症状と苦手意識
■ 長期雇用に結びつく要因
■ 転職経験がある人の転職理由
■ 就職活動の際に利用したことのある機関