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長期雇用に結びつく要因

 ここまでで検討した要因・項目には、仕事の定着に影響があったものもあれば、なかったものもあった。しかし、単純な関係性の分析というのは、各要因が互いに影響しあっている効果を打ち消すことができないという欠点がある。
 そこで必要になるのが回帰分析という手法である。この分析方法をとることによって、それぞれの変数独自の影響を取り出すことができる。分析したのは長期雇用(3年以上)と関連を持っている変数である。結果は以下の表の通りである。

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 グレーでマーカーしたところが影響をもつ変数である。水準の欄には統計学的に有意な差が認められたものがアスタリスクでマークしてある。そのP値は右の欄に記載した。
 まず、性別であるが、男女で特に雇用の長期化には関係は認められなかった。
 大卒/非大卒は非大卒が長期雇用につながるという結果となった。非大卒に比べ大卒は0.25倍、長期雇用になりにくい。つまり、非大卒の方が長期雇用に繋がっているという結果であった。
 一般人口では、大卒のほうが就職には有利であり、正規雇用になりやすく、就労期間も長い。しかし、発達障がいを持ち働いているという条件で集まった会議では、一般人口とは全く逆の結果が出た。非常に興味深い結果である。
 社会人期間とは、社会人になってからの期間のことで、高校や大学などの最後に所属していた教育機関を卒業してから現在までの期間のことである。この期間は長期雇用との関連があることか分かった。つまり、社会人経験が長ければ長いほど、長期雇用に結びついているということを意味している。
 これには2つの解釈が可能である。
 一つは、長年社会人経験を送っていると、長期雇用に結びつく就労機会を見つけるチャンスが多く見つかるという解釈である。長年、社会人生活をしていれば、長期的に働ける職場を見つけるチャンスも多く巡ってくるはずである。
 もう一つは、長年社会人経験を続けると就労に慣れて、職場にも慣れていくという解釈である。つまり、発達障がいの特性はあったとしても、それに対しての対処法を心得ていき、周りとの関係を円滑にする術を少しずつでも学習していくことによって、長期雇用が可能になっているという解釈である。
 どちらにしても、社会人経験が多いほど長期雇用の機会は増えていくようである。

 次に、正規雇用が非常に強く長期雇用に結びついていることがわかる。これは、先ほども検討したように、因果関係ではなく、正規雇用であれば、長期雇用になるという雇用形態のことであると考えられる。
 発達障がいの特性についてみたところ、ASD(自閉症スペクトラム指数)は関連が見られなかった。今回は発達凸凹を持つ人たちだけの会議なので、一般人口に比べて、自閉症スペクトラム障がいがマイナスにならないと言うことではない。発達凸凹の中で自閉症スペクトラム障がいの傾向は短期・長期に関してプラスにもマイナスにもならないということを意味している。
 一方で、ADHD(成人ADHD自己記入症状)は長期雇用と負の関連が見られている。つまり、ADHDの傾向がある者は、長期雇用になりづらい傾向が見られたということだ。おそらくこれはADHDの特性と何らかの関連性があると考えられる。
 この分析において、最も示唆があったのは、社会人経験が多いほど長期雇用の機会は増えていくという点であろう。検討であげた2つの解釈のうちどちらの解釈が正しいかはわからないが、少なくとも社会人経験を経ることは長期雇用を得ることにプラスになっているようだ。

■ 参加者の年齢と性別
■ 就労継続期間
■ 雇用形態
■ 長期就労者のいる職業領域はどこか
■ 自閉症スペクトラム指数と作業の苦手さの関係性
■ 成人期のADHDの自己記入式症状と苦手意識
■ 長期雇用に結びつく要因
■ 転職経験がある人の転職理由
■ 就職活動の際に利用したことのある機関