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12/19(木) 第4回 ぴあさぽ!カフェ開催レポート

第4回 『ぴあさぽ!カフェ』テーマ「発達凸凹が活かせる職場環境を考える」レポート

日時:2013年12月19日(木)
開催場所:CANVAS谷町 大会議室   進行:広野 ゆい

登壇者:松浦聡氏(社会福祉法人永寿福祉会 永寿の里「彩羽」施設長)
     元村祐子氏(社会福祉法人永寿福祉会 永寿の里「彩羽」看護師)
参加者数:18名(うち企業の方2名)

私たちの事業の4回目のイベントである『ぴあさぽ!カフェ』の日を迎えた12月19日。

今回は、広汎性発達障がいの当事者で、看護師として働く元村祐子さんと、職場の上司である施設長の松浦聡さんをお招きして「発達凸凹が活かせる職場環境を考える」をテーマに対談を行いました。

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お二人が働く、社会福祉法人永寿福祉会 永寿の里「彩羽」は、定員が40名の入所施設で、知的に障がいのある成人の方々が、皆で一緒に生活している施設です。男性20名、女性20名で、重度の知的の障がいを持っている方が生活しています。元村さんたちはそこで、看護師として入居者の日常生活のサポートをしています。

松浦さんより施設のご紹介とご自身のことについてお話いただいた後、本題である「発達凸凹が活かせる職場環境」についての話題へと進んでいきました。

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【広野】元村さんから発達障がいであるとカミングアウトされた時、松浦さんはどのような気持ちでしたか。

【松浦】ハローワークから応募され、面接の担当をしたのも私で、その時は発達障がいだとは分かりませんでした。何週間かして業務や周りのスタッフと上手くいっているかを聞くために面談をした時、元村さんからは「彩羽のお客さん(入居者)は素敵で、スタッフの皆さんもいろいろ教えてくれます。」ということで、私もいい感触を得たので、「一緒に頑張っていきましょう!」と言った直後に、元村さんから「私、発達障がいなんです。」と告白されました。このタイミングで言うのかと驚きましたが、一緒に働いていく上で信頼関係をもつことができました。

【広野】元村さんはカミングアウトした時、どんな気持ちでしたか。

【元村】発達障がいのことをスタッフの皆さんがどれだけ知っているか分からなかったですし、私が発達障がいだと言わずにいて、いつかミスをするのではないかという恐怖感もあり、自分の口から言おうと思いました。カミングアウトした時に言われたことは、「正直にお話してくださってありがとうございます。発達障がいだからといって労働条件や業務内容が変わることはありません。」ということで、困っていること、苦手なこと、サポートしてほしいことを話すことができました。

【広野】元村さんは、職場にどのような伝え方をしましたか。

【元村】自分の苦手なこと、特性を伝えるために自分の取扱説明書※を松浦さんに提出しました。私の特徴や仕事で困っていること、同時に2つ以上のことができないこと、暗黙のルールがよく分からないことなど8項目にまとめてお伝えしました。
私は、この職場で働きたいという気持ちが強いので、できないのにできるような顔をして働くのではなく、できないところは助けてもらうと同時に、それだけでは駄目なので、私もやれることは精一杯努力をするということを表明しないと受け入れてもらえないと思いました。
※自分の取扱説明書:発達障がいは、見えない障がいであり、診断名だけでは本人のできること、できないことがわかりにくいため、自分の特性について説明した「取扱説明書」を作成することが、よくあります。

【広野】これまでの職場とはどんな違いがありますか。

【元村】ミスは減っておらず、ほぼ毎日失敗しています。何が違うかというと、怒られたことが1回もなく、どうすれば私のミスが防げるのかを周りのスタッフの皆さんが考えてくれる職場であることが明らかに違います。スタッフの皆さんがそのように考えてくださるので、私も頑張ろうという気持ちになります。

【広野】松浦さんが施設長として配慮されていることはありますか。

【松浦】元村さんには利用者さんの薬のセッティングをしてもらっていて、その業務は元村さんでなくても誰でもミスをします。人間である以上、ミスが起きることは前提で考えた方がよく、チームで働くのだから、チームワークで知恵を出し合い、ミスを無くすということが大切です。ミスが起きることは防げませんが、ミスに気づき善処することはできます。

【広野】ミスが多かったりする人を受け入れるためには、どのような職場風土が求められますか。

【松浦】職場の風土がいいのか、悪いのかで障がいがあろうとなかろうと職場の定着率は左右されると思います。私の仕事は、施設で生活をしている人たちとどう向き合うかということで、一緒に働く仲間と向き合い、発達凸凹の人と向き合うということ。人として向き合うことができないで、どうして利用者さんと向き合うことができるのかという考え方です。

【元村】この施設では、自分のやり方、自分のペースで仕事ができているので、特性をもつ私たちにとっては働きやすいと思います。

【広野】そういう職場風土の中で元村さんは仕事をされていますが、どうすれば凸凹がある人、ない人が上手くやっていけるのか、理想の職場環境についてお伺いします。

【松浦】一番大事なのは職場風土であり、これが冷たかったり、寂しい所であったら温かみのある人は出てきません。また、発達凸凹があろうとなかろうと、人としての人間力をどれだけ高めるかを目ざし合えたら、選んでもらえる施設になるのではないかと思います。

【元村】私たちも社会の仕組みやルールを知っていくことが大事だと思います。発達凸凹を負い目に感じず、スタッフの皆さんの足を引っ張らないように、私ができることを一生懸命やっていけば、いい方向にもっていけるように思います。

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対談の感想を参加者の方々に聞いてみたところ、「職場では、自分自身が特別な目で見られている感じで、職場に松浦さんのような方がいればもっと上手く職場環境がまわるだろう」という意見をいただき、その感想に対し、松浦さんは、「部署単位の長が苦手なことがある社員に対してサポートするような配慮をすることで、その社員と打ち解けることができ、そういうことが職場風土に直結する」ということを指摘されていました。前回のグループワークでもそうでしたが、理解者がいることが発達凸凹当事者にとって職場における人間関係の改善であったり、職場環境を良くするのに大きな存在であるということを再度実感することができました。

その後、松浦さんと元村さんにも交流会に参加していただき、参加者の皆さんと意見交換をしていただきました。
今回は、企業側、当事者双方のお話を伺えるという貴重な機会となりました。
私も前の職場では、ミスや失敗を繰り返し、怒られるという苦い経験があり、今回の対談を通して、理解のある職場こそ自分にとって働きやすい職場環境であり、自分のペースで働ける職場を探す必要があると感じました。そのためにはまず、自分の特性をしっかり把握し、それを相手に伝えることができるようにするという課題が見つかったように思いました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

(記事:小堀)